工具の紹介1 洋彫りタガネ

工具

洋彫りタガネ チャッポラ

ちょっとマイナーな工具、洋彫りタガネについてご紹介します。
模様彫りの他、石留めや彫刻的な用途もあり、作風の要となる重要な工具です。
私は“Ciappola”と呼ばれるタイプのものを使ってます。
洋彫りと言うと、日本ではグレーバーマックス等の機械彫りをイメージされる方が多くいらっしゃるかと思いますが、私が使っているのは古典的な手彫りのタガネです。
銅版画などに使われている、ビュランの彫金用バージョンと考えていただくと、想像しやすいかと思います。


洋彫りタガネを仕立てる

基本的に刃物の部分と、木製の取手の部分は別々で売られております。
それらを各自が使いやすい様に加工して使います。
具体的には使う人の手の大きさや好みに合わせて、刃の全長を調整。
グラインダー等で刃先の部分を削って整えます。
木製の取手も必要に応じて加工して、刃と合体。
仕上げに刃の研磨と、砥石で刃先を研げば完成です。


刃先の種類

チャッポラの種類は刃先の断面形状ごとに分けて全部で四種類。
三角刀の“Ongella”、丸刀の“Mezza-tonda”、平刀の“Piana”の三種の形状と、絹目テクスチャ用の“Rigata”があります。
それぞれ大小各種サイズがあり、それらを使い分けながら彫刻します。

三角刀 Ongella

細い直線や曲線を彫るためのタガネです。
線画や印台の文字等に使用します。
彫り留めの爪を切り出す用途もあり、最も使用頻度の高いタイプと言えます。

丸刀 Mezza-tonda

底の丸い溝を彫る事のできるタガネです。
小さな水玉模様や、少し幅広の模様を彫るときに使用します。

平刀 Piana

平らな刃のタガネです。
面取りや凹凸をそぎ落とす用途、面の掘り下げに使用します。

テクスチャ用 Rigata

複数の平行に並んだ筋目を彫ることのできるタガネです。
絹目状のテクスチャを彫るのが主な用途ですが、使い方によってはマットな質感のテクスチャを彫ることもできます。


特長

なかなか少数派の工具ではありますが、小回りの利く汎用性があります。
手の力だけで彫っていくので制作に根気が必要です。その分、細かい強弱を表現しやすく、繊細な手彫りの風合いが出ます。シンプルな分だけ、職人の工夫や個性が活きる奥深い工具だと私は思います。