宝石をジュエリーにセッティングする石留め技法は多種ございます。
石留めとは宝石をジュエリー本体に固定する技法の総称で、イタリア語ではインカッサトゥーラ(Incassatura)と呼ばれております。
主な石留め技法は大きく分けて二種類のタイプがございます。
・石座と呼ばれる石が収まる台座部品を作って、そこに石を留めるタイプ
・地金に穴をあけて、そこへ石を埋め込むように留めるタイプ
前者の石座を使ったタイプは比較的大き目の宝石に用いられる技法で、『爪留め』や『覆輪留め(ベゼルセッティング)』が代表的な例です。
後者の地金に穴をあけて留めるタイプは小さな宝石に用いられる技法で、その総称を『彫り留め』と呼びます。
石座を用いた石留め
爪留め
多くの方にとって、ダイアモンドのエンゲージリングでイメージされるデザインは、爪留めを用いたものではないでしょうか。
爪留めは棒状の爪で石の周りの数カ所を点で留める技法です。
手のひらにボールを乗せて、落ちない様に指で掴んだ状態に近いイメージです。
細い爪で石を固定するので、比較的少ない地金で留めることができます。開放的で石の側面が見える面積も多く、軽やかなデザインにできます。爪の形状や本数によってアレンジの幅も広い技法です。
爪留め
爪留め
覆輪留め
ベゼルセッティングとも呼ばれ、石のフチをぐるっと一周囲むように地金でおさえて固定する石留技法です。
衣服に引っかかりにくく、丈夫で石が外れる可能性も低い事が長所です。
石のフチが露出していないので、普段使いでの石へのダメージを軽減できます。
そのままシンプルモダンなデザインにも、タガネ彫りを加えてクラシックデザインにも対応できる汎用性の高さも魅力の一つです。覆輪留めの石座を王冠のような形に肉抜きして、爪留めに近いデザインにしたタイプもございます。
覆輪留め
覆輪留め(王冠型)
彫り留め(地金に穴をあける石留め)
『彫り留め』はプレーンな地金の面に石が収まる穴をあけ、その周囲にタガネを使った彫刻で爪を成形して石を留めます。
細分化されて名前がついている物が多く、『パヴェ』『後光留め』『レモン留め』『マス留め』等々は彫り留めの一種です。名前は様々ですが、これらは共通する技法を使ったデザイン違いのバリエーションと考えてほぼ差し支えないかと思います。(パヴェは隣接する石同士の関係性を考える必要があるので少し特殊ですが…)
パヴェ(Before)
パヴェ(After)
彫り留めの利点は、元々シンプルな形状でも石を留めることで豪華なデザインへと、大きく印象を変えることができる点です。充分な余白と板厚があればフォルムを変えることなく石を入れることができます。
手間をかけたものは裏からも美しく見えるよう、糸鋸で多角形に裏抜き成形してあります。
『彫り留め』は『透かし技法』との相性が良く、両方を組み合わせた『透かし彫り』はフィレンツェスタイルに多く使われる代名詞的な技法です。小さな石を星々のように散りばめた幾何学的なデザインが魅力です。
彫り留め
透かし彫り
ここまで挙げた以外にも『アンティーク留め』のように広義では彫り留めに分類されつつも少し異なったものや、『レール留め』のように他の分類に当てはめるのが難しいタイプの石留め方法もございます。
アンティーク留め
多角形の裏抜き
良い石留めとは
ここまでご紹介した通り、石留めには様々なタイプがありますが、全てに共通しているのは宝石のフチに爪などの地金を覆いかぶせて石を固定している点です。宝石に覆いかぶさる地金(爪や覆輪)の面積(大きさ)が必要最小限で、しっかりと外れず安定した石留めが『良い石留め』と呼べるかと思います。
強度に問題がない範囲で、小さい爪を最少限の個数で石を留める事が一つの理想であると言えます。
ただし、意匠デザインも兼ねている部分でもあるので、一概には言えないところでもございます。
Root nでは複数の石留め技法を適材適所に組み合わせて制作しております。