インチジオーネ(彫金技法)

技法

彫金とは

『彫金』という言葉を耳にしたことはございますでしょうか?

本来の意味は読んで字の如く、金属をタガネなどの切削工具を使って彫ることを指す言葉です。
今ではジュエリー制作全般を指す広義の言葉としても用いられております。
彫金という言葉が広く使われるようになったため、彫金(ジュエリー制作)される方の中で、実際に金属を彫っている方が少数派という状況だったりもします。

タガネを使った彫金の良さは、鋳造しただけでは出せないディテールとエッジの鋭さ、切削加工ならではの輝きにあります。

指輪側面へのインチジオーネ
石座と本体外枠の側面への装飾彫り

和彫りと洋彫り

彫金技法は使う工具の違いから、大きく分けて二種類ございます。

日本古来の『和彫り』と欧米で主流の『洋彫り』

日本の伝統的な彫金技法は和彫りと言われていて、古くは刀装具の装飾に使われていた技法です。棒状のタガネの後端を小さな金鎚で叩いて彫っていくスタイル。

一方で洋彫りは銅版画などに使われていた技法で、グリップの付いたタガネを押し出しながら彫っていくスタイルです。Root nではチャッポラというクラシックな洋彫りタガネを使用して制作しております。

洋彫りタガネ(チャッポラ)

和と洋の彫金それぞれに違った魅力があります。ざっくり特徴を説明するならば、和彫りは毛筆の様なダイナミックな雰囲気で、洋彫りはペン文字の様な繊細な雰囲気です。

洋彫りを練習した銅板

和彫りと洋彫りの区別は使用する道具(タガネ)の違いというのが一般的ですが、作風の違いを表すこともあり、定義が少々曖昧なところもございます。


インチジオーネ

イタリアでは前述のチャッポラという洋彫りタガネを使った、インチジオーネ(Incisione)と呼ばれる彫金技法で制作しております。

私がイタリアで学んだ『フィレンツェスタイル』の代名詞的な技法に『透かし彫り』というものがございます。糸鋸で透かし模様を施した後に、隙間なく宝石や模様を彫り入れていく技法です。
洋彫りタガネは模様彫りだけでなく、テクスチャを入れる用途にも使われます。

透かし彫りとメレ石の彫り留め
洋彫りタガネを使用した葉っぱや石座のテクスチャ

このような伝統的な技法を使ったアンティークなデザインをベースに、Root nでは若干のモダン要素を加えて現代の装いに合わせやすくした作風をメインに制作しております。

洋彫りタガネ工具についての詳しい説明は別ページにて解説いたします。